梅田芸術劇場で2025年4月13日17時開演の回を観劇した。核心は書かないように気を付けたがネタバレしているかもしれない。

短めの上演時間にテンポよくまとまったストーリー
1幕65分、2幕55分、休憩25分だった。振り返ってみればテンポよくすすんでいくストーリーだった。舞台装置は大きめながらよく動いて見ごたえがある一方、照明のテイストが暗め、音楽の曲調も重たい感じだった。初見で受けた印象としては、ストーリーのテンポの良さやよく練られているんだなってところが、舞台の質感の重さ暗さにかき消されていたように思う。もう一度観たら、表層の重たさより、お話の本質やセリフなどの細かいところをもっと拾えるんだと思う。
キャスト感想
愛希れいかさん:侯爵令嬢ソフィ
私が宝塚歌劇を見るようになったきっかけは、2018年夏にお友達に見せてもらった「BADDY」の映像だ。愛希さんは2018年秋のエリザベートで宝塚を退団されたので実際に生で彼女を拝見したことはなかった。月組の映像を履修するにつれ、舞台真ん中の華やかさと芯のあるしなやかさが感じられて、他の娘役の誰とも違う魅力のある方だなと感じていた。今回イリュージョニストのチケットを買ったのは愛希さんを見てみたかったからだ。(梅芸会員一番最初の抽選で買った。あとからお得なチケットも発売してたようだが、定価で買った)
出番や歌唱は少なめながら、1幕の凛とした様子:アイゼンハイムにも皇太子にも自分の考えをいう声音などがよかった。2幕はほとんどしゃべらない歌わないが、最後の白いドレスの着こなしが綺麗で驚いた。いい意味で現実感がない天使みたいな姿が、物語の救済に思えた─アイゼンハイム側からみたときに。
濱田めぐみさん:興行主ジーガ
歌がうめぇ。
アイゼンハイムを舞台に上げ続けて、事業の従業員としてではなく、家族のように思っている要素がよかった。母と息子というと、言い過ぎでキモいのかもしれないが、わかりやすく共感できる想いでよかった。アイゼンハイムやソフィ、皇太子も、昔の恋や今の権力・パートナー候補への執着がすごすぎて共感が難しい。ジーガの自分のビジネスを誇りに思っている様子や、アイゼンハイム=エドワード自身との長年の関係を大切に思っている様子がよかった。
1幕では特に狂言回し的な役目を担っていて、彼女がプロデュースしている公演を我々観客が見ているような仕掛けになっている。ストーリーがすすむにつれて、彼女は衣装を変え、小道具のステッキを置き、アイゼンハイムの“家族”として存在してく。2幕、アイゼンハイムはもう彼女の公演にはでていない。最後、もうひとりのストーリーテラー・警部と共に、いなくなった登場人物をおもうシーンがある。ほんとうのほんとうの幕引きで、濱田めぐみさんが我々観客にむけて主題にかかわるセリフを言うのだが、見事に興行主ジーガの顔に戻っていた。背中がゾクッとするような感覚がした。つまり、ストーリーの構造がよくできていると理解できた。そうとわからせてくれる濱田めぐみさんのお芝居が素晴らしいと感じた。
目立つ空席とおまんじゅう
3月にドラマシティのSIXを見に行ったときに、席を選べることを売りにしてイリュージョニストのチケットが売られていたのを見た。チケットが余っているんだとは察していたが、当日もまぁまぁ空席が目立っていた。イリュージョニスト、いい作品と思ったが、なかなか私は複数回は見れない。なんせ、先月はSIX、レミゼを見た。今月はBonnie&Clyde、来月は彩風さんのコンサート、1789、キンキーブーツを見る予定だ。そして宝塚をぼちぼちである。最近のチケット価格は、宝塚以外は適正だと思っているが、給料と他の支出とのバランスが難しい。自分個人で複数回見れないなら、多くの他人が1回ずつ見ればいいという理屈が思いつくが、多くの他人も、同じように給料と支出のバランスをとっている勤め人だろう。世知辛い。

お饅頭をくださった。観劇時に甘い和菓子を食べると、糖分が体内の水分とむすびつき尿意を感じづらいというSNSの流説にのっとっているらしい。公演時間は短めなうえ、空席のぶん観客が少ないからトイレ列は爆速で進んでいた。切ない。
饅頭は、滋賀のたねや、つまりCLUB HARIEのとこのだった。塩気が効いていて美味しかった。饅頭の分のコストをチケット代で回収する必要はないのかもだが、イリュージョニスト、おすすめしときたい。お近くの人は見てみてははいかがだろうか。4月20日まで梅田芸術劇場で上演中だ。
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